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認知科学Ⅱ 声から単語へ（２） ２００３年１２月３日 身振りとことば 非言語情報と言語の間をとりもつ身振りがどのように発達するかをことばの発達に関連付けて考察する． 非言語的認知と言語 なんらかの妥協点を見つける作業を我々は話す過程で行なっている． 身振りの分類 共発話身振り (co-speech gesture) エンブレム (emblem) 自発的身振り (spontaneous gesture) 拍子 (beat) 表象的身振り (representational gesture) 映像的身振り (iconic gesture) 直示的身振り (deictic gesture) 観察してみよう 浜松駅周辺の大きな商業施設の位置関係について教えてください 平行な２本の直線における「錯角」と「同位角」について説明してください 東京駅から浜松駅までにある新幹線の駅名をすべて挙げてください ジェットコースターはなぜ止まらずに走れるのか説明してください 表象的身振りと言語 喜多の実験(1993) 日本語話者と英語話者との間では，表象的身振りに違いが観察された． 英語話者は“swing”という単語を使って弧を描く軌跡を示した． 日本語話者は比喩表現や「飛んでくるみたいなこと」「飛び移ろうとした」「小鳥の方を目掛けていった」「ビルからビルへ」などの表現で猫の移動について表現した． 表象的身振りと言語 表象的身振りは，アニメーションから取り込まれた空間的情報への忠実度と，言語による表現のしやすさの間の「妥協」の産物ともいえる． 表象的身振りは，認知と言語の接点で生成されている． 表象的身振りに現れるイメージは，言語とは無関係に想起されたものではなく，言語と言う社会的に規定された枠組みの中で，いかに非言語的情報を構造化するかという創造的な思考過程そのものである． ことばの発達と身振りの発達 １歳半以前の子どもの身振り 直示的身振り からだの一部を伸ばしてある方向を指し示す身振り 象徴的身振り (symbolic gesture) からだの動きとその指示対象間に類似性がある点では映像的身振りに似ている 必ずしもことばとともに発せられないこと，同じ身振りが何度も使われる点ではエンブレムにも似ている これらに１，２ヶ月先立って，形式は同じでも機能のはっきりしない原身振り(proto-gesture)が現れる． 指さしの発達 指さしの出現は，３つの発達の流れが１つにまとまり新たな機能をもった行動を生み出す瞬間 指の動きと言語的音声の同期 (synchronization) 声帯を振動させる言語音らしき声を発した前後に指立てが観察される（生後３ヶ月ごろ） 指を伸ばし視線も伴った指さしが急激に増える（９ヶ月～１３ヶ月） 方向に関する意図を伝えることの発達 「手差し」は大人を自分の思うとおりに動かすのに使われ、指さしはものを指し示すのに使われる 指さしによるものの探索 象徴的身振りの出現 からだの動きそのものが，もの，しぐさ，起こって欲しい出来事などを表現する 同じからだの動きは違う場面でもほぼ同じ意味で使われる 生後１０～２０ヶ月の間に現れる 音声による単語の出現と身振りの単語の出現時期はほぼ同時期 二語発話と身振り ２０ヶ月齢前後に，単語と単語を組合わせる二語発話がはじめて出現する． 一語から二語発話への変化に身振りが重要な役割を果たしている． １６ヶ月以降，身振りと安定した意味の同定できる単語との組合せが観察される． 種類同定タイプ 犬のぬいぐるみを指して「犬」という場合（述語タイプの2.5～8倍の頻度で使用される） 述語タイプ 手のひらを上に向けて差し出す身振りに「クッキー」という場合 課題：身振りで表現する 次の文章に従った内容を身振りで表現する場合の動作をできるだけ詳細に記述せよ． 手のひらにのるくらいの大きさの丸いボール状のモノを，数メートル先にある的にぶつけると，天井から大量の水が降ってきて膝上まで溜まった． 横断歩道がない交通量の多い道路を走って横断しようとしたら，避けきれない車が来たのでとっさにジャンプしてその車を飛び越えて無事道路を渡り切った． お薦めの本 「ことばの前のことば　ことばが生まれるすじみち１」やまだ ようこ　（新曜社 1997） 「子どもたちの言語獲得」　小林春美?佐々木正人　（大修館書店 1998） 「ことばが誕生するとき」　無藤隆編　（新曜社 1995） 「赤ちゃんは知っている　認知科学のフロンティア」　ジャック?メレール／Ｅ?デュプー　（藤原書店 1997） * 視角や触覚による 非言語的認知 ユキ？ダンゴ？シロ？ボウシ？ダルマ？ 我々は，見たこと，聞いたこと，触ったもの，味わったもの，嗅いだもの，考えたこと