志贺直哉第一期第二期小家族系.DOCVIP

PAGE PAGE 1 志賀直哉の第一期?第二期の小説における家族関係 ―長男の位置づけをめぐって― 指導教官　林雪星　先生 鄭凱昇 一、研究動機 「近代以後と、近代以前の家族には質的な差がある」 山田昌弘（初出1994、1999）『近代家族のゆくえ　家族と愛情のパラドックス』新曜社p.20と山田昌弘が指摘した。日本の近代について、青山道夫は「日本社会の近代化が明治維新によって発足したことは、すでに一般に承認されているところである」 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版社p.155と説明されている。しかも、落合恵美子は「家は明治民法の発明だとする人々の論拠としてしばしば挙げられる」 落合恵美子（初出2000、2006）『近代家族の曲がり角』角川書店p.30 山田昌弘（初出1994、1999）『近代家族のゆくえ　家族と愛情のパラドックス』新曜社p.20 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版社p.155 落合恵美子（初出2000、2006）『近代家族の曲がり角』角川書店p.30 山田昌弘（初出1994、1999）『近代家族のゆくえ　家族と愛情のパラドックス』新曜社p.29 一方、近代文学の面から見れば、近代家族をめぐって語った代表作家の一人は志賀直哉である。それについて、小川国夫は、「志賀氏は三四の例外の作品を除けば、始終家を意識し、家について書き続けた作家だ。彼は家族の一人一人について、愛し、あるいは抗争し、拘泥した作家だ」 小川国夫（初出1967、1977）「志賀直哉の家」『日本文学研究資料叢書　志賀直哉Ⅰ』有精堂pp.121－122と論説している。さらに、家や家族に関する志賀直哉の作品では、主人公が一家の長男の場合が多い。例えば、処女作である、祖父の三回忌の朝、「信太郎という青年とその祖母との間のささいな衝突に始まる感情の対立から解消へのプロセスを描いた」 寺本喜徳（1989）『表現学大系　各論篇第一一巻　近代小説の表現　三』教育出版センターp.46『或る朝』「創作餘談」によると、「「或る朝」は二十七歳の正月十三日亡祖父の三回忌の午後、その朝の出來事を書いたもので、これを私の處女作といつていいかも知れない」という。（1918、発表時間 発表時間は紅野敏郎の作った「著作年表」によるものである。紅野敏郎（1974）「著作年表」『志賀直哉全集　第十四巻』岩波書店pp.407―455 小川国夫（初出1967、1977）「志賀直哉の家」『日本文学研究資料叢書　志賀直哉Ⅰ』有精堂pp.121－122 寺本喜徳（1989）『表現学大系　各論篇第一一巻　近代小説の表現　三』教育出版センターp.46 「創作餘談」によると、「「或る朝」は二十七歳の正月十三日亡祖父の三回忌の午後、その朝の出來事を書いたもので、これを私の處女作といつていいかも知れない」という。 発表時間は紅野敏郎の作った「著作年表」によるものである。紅野敏郎（1974）「著作年表」『志賀直哉全集　第十四巻』岩波書店pp.407―455 小谷野敦（1初出1995、997）『男であることの困難　恋愛?日本?ジェンダー』新曜社p p.109－110 安岡章太郎（初出1968、2004）「解説」『和解』新潮社p.117 二、先行研究 「「家」というものはまず家長によって代表され、極端にいえば家長さえあれば「家」は成立するわけである。しかし、「家」は永久に存続すべきものという前提をもっているために、何よりまず家長の後継者をもたなければならない」 中根千枝（初出1968、1983）「「家」の構造―社会人類学的分析―」『東京大学公開講座11　「家」』東京大学出版会p.10と中根千枝が指摘した。また、当時日本の相続制度について、青山道夫は「長子相続制を採用」 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版社p.229すると指摘したと共に、「長子相続制（Primogeniture）とは、長子とりわけ長男子が被相続人の地位を単独に包括承継する相続制度と定義付け得よう」 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版会p.207と定義している。さらに、石原千秋は「長男は、家の中では生まれながらにして貴種だったのである。家督は、長男から長男へ、点から点へと手渡される。それが、＜家＞という名の法人の決まりなのだ」 中根千枝（初出1968、1983）「「家」の構造―社会人類学的分析―」『東京大学公開講座11　「家」』東京大学出版会p.10 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版社p.229 青山道夫（1978）『日本の家族制度論』九州大学出版会p.207 石原千秋（1999）『漱石の記号学』講談社p