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第29巻 第7号 (1980) 441
総 説
天然香料関連化合物について
梶 原 正 宏
(株)資 生 堂 研 究 所(横 浜 市 港 北 区新 羽 町1050)
Flavor Materialsof Natural Origin
MasahiroKAJIWARA
ShiseidoLaboratories
(1050Nippa-cho,Kohoku-ku,Yokohama)
メチル シクロペ ンタデカノンであることが確認 され,調
緒 言
合香料 に賞用 されてきてお り,多数の大環状ムス クが合
天然香料1)を大別す るとじゃ香(ム ス ク),霊び ょう香 成 されてい る。 天然 じゃ香の相場は1kg当 た り,700
(シベ ット),竜ぜん香(ア ンバーグ リス)な ど動物性香 万円~1,000万円 といわれてい る。
料 の ものと,植物の枝葉,花 などか ら得 られ る植物性香 最近の合成方法3)は大別す る とEschenmoserら4)のシ
料 に分けられ る。 クロデカノンのRingexpansionreactionを利用す る
動物性香料 は数 は少 ないが,い ずれ も高価 な ものであ 方法 と種々の触媒等 を用いての環化反応 を利用する方法
り保留剤 として重要であ り,合成的にも大環状化合物が が主である。
注 目されてい ることよりこれ らの香成分の最近の合成方 1・1シクロデカノンのRing cxpansionreaction
法 を記す。植物性香料 は植物精油が主体であ り,実際に によるムス コン合成
香料 としてあるいは香料の合成原料 として使用 されてい Eschenmoserら4)はα,β-エポキシ-p-トシル ヒ ドラゾ
るものは約520種ぐらいである。 ローズ油等の主な植物 ンに よる環拡大反応 を行い,ア セチ レン基 とカルボニル
香料 の成分 について述べる。 基 を有す る化合物へ と導き,目 的 とするdl-ムス コ ン
こん虫 と香 り,例えばみつばちの訪花 の恒 常性 の成 (1)を全合成 してい る。 さらに最近Fristadら5)はビニ
立2)のためには花 の色 と香 りが識別 の対象 とな り,にお ル シリル化合物 より選択的シクロペ ンタノン付加体へ と
いの方は無数の種類 があ り,種ごとに違 うのでみつばち 導 き,オ ゾン酸化反応 に よ り環拡大反応 を行い,目 標 と
は種 を とり違 えないですむのである。他方植物 の方 か ら する(1)を合成 してい る。
い うと,れんげの花 はれんげの花の花粉 の媒介 を待 って 1・2環化反応を利用するムスコン合成
いるのであって,れ んげの花はあぶ らなの花粉 を媒介 し 大環状 の環化反応 は分子 内閉環反応 と分子間反応 が競
て もらって も何 もな らないのである。その意味でみつば 合するため非常に難 しく,従来,高 濃度 では分子 間反応
ちの訪花の恒常性 とい うことは植物の方 か らい って も極 が優先することよ り,極めて希釈 した状態
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