介護現場におけるリーダーの特性に関する研究-「他の職員の目標」 となるリーダーはどのような特性を持っているか.pdfVIP

52 介護経営 第6巻 第1号 ２０１１年１１月 ［研究論文］ 介護現場におけるリーダーの特性に関する研究 －「他の職員の目標」となるリーダーはどのような特性を持っているか－ 著者 ：影山 優子 （西武文理大学 サービス経営学部） 共著者：藤井 賢一郎 （日本社会事業大学専門職大学院 ビジネスマネジメントコース） 白石 旬子 （日本学術振興会 特別研究員DC） 田口 潤 （日本社会事業大学大学院） 抄録 本研究は高齢者施設で働くリーダーの特性を明らかにすることを目的とし、1500 か所の施設に対して郵 送法により調査を実施した。分析対象は、①直接介護業務に従事している②介護現場での経験を 10 年程度 有する③他の介護職の目標となる存在である、という条件を満たすリーダーとした。調査項目は、リーダ ーシップに関する個人的特性と、現在の職場環境等を評価する項目とした。270 票が回収され、欠損値の ない 197 票を分析対象とした。共分散構造分析により一定程度の妥当性のあるモデルが構築され、リーダ ーは、「介護の仕事が楽しい・長く続けていきたい」という気持ちが根底にあり、それらがリーダーとして の自信を高めると同時に上司や組織に対するフォロワーシップの発揮にもつながっていた。そして、それ が、最終的には「配慮型リーダーシップ・スタイル」に到達することが示唆された。 キーワード ：介護現場、介護職員、現場リーダー、リーダーシップ、フォロワーシップ 1.緒言 は、事業所ごとにキャリアパスモデルの提出が義 社会的に介護ニーズが増大している一方で、介 務付けられているが、これらのモデルは事業所側 護職員をめぐっては、 ここ５年、離職率が高い、人 が期待するキャリアモデルを前提としがちであり、 材確保が難しいといった問題がマスコミ等で繰り 必ずしも実際に働く介護職員の立場に立って作ら 返し報道されている。財団法人介護労働安定セン れたモデルになっているとは言い難い面がある。 ター1）がまとめた平成 22 年度介護労働実態調査に こうした現状を踏まえ、筆者らは、部下や後輩 よると、介護職員の離職率は全体で17.8％であり、 の立場から「いつか自分もああなりたい、このよ 訪問介護員、介護職員の離職者のうち 77.6％が入 うに働きたい」といった、自身の積極的な将来像 職から 3 年未満の者であるという報告がされてい を投影できるリーダーの特性を明らかにすること る。早期離職が多い現状では、介護職員として働 が、長期的な視点から見て介護人材の確保・育成 き始めても、自分のキャリアモデルとなるような の鍵になるのではないだろうかと考えた。また、 先輩を見出しにくくなっていることが想定される。 こうしたリーダーは、単に「リーダー」として優 介護職員の離職の背景としては一貫して低賃 れているだけではなく、介護職員としても輝いて 金・低処遇が指摘され、それを受け、平成21年度 おり、また、上司・先輩のフォロワーとしても優 より介護職員の処遇改善を目的に「介護職員処遇 れているのではなかろうか。 改善交付金」が創設されるに至ったことは周知の リーダーシップに関する研究は1950年代から始 とおりである。そして、この交付金制度において まり、現在に至るまで数多くの研究が報告されて 介護経営 第 6巻 第 1号 ２０１１年１１月 53 いる。淵上 2）によるとそれらの研究は、そのアプ ている