布教用ホームページの効用について─ 広島県における仏教寺院の事例より─.docVIP

布教用ホームページの効用について ─広島県における仏教寺院の事例より─ The Utility of a Home Page for Missionary Work Cases of Buddhist temples in Hiroshima pre. 國學院大學日本文化研究所共同研究員 深水顕真 Fukamizu Kenshin 布教用ホームページの効用について　 ─広島県における仏教寺院の事例より─ 國學院大學日本文化研究所共同研究員 深水顕真 1.　はじめに 1.1　本論の目的 1998年の調査で 、日本国内のインターネット利用者が前年比1.7倍の1000万人の大台を突破した。国民の約十人に一人がインターネットを何らかの形で利用している今日、宗教研究の分野においてもこのインターネットの影響力を考えないわけには行かない。 　國學院大學においては1998年からこのテーマに関し、日本文化研究所専任プロジェクト「情報化と宗教に関する研究　─Computer Mediated Communicationを中心に─」として、黒崎浩行、田村貴紀、葛西賢太、および深水が、綿密な共同の調査研究を行っている。 この共同研究においては、具体的に３つの調査活動を行ってきた。第一が独自のサーバーを設けた宗教関連のインターネットウェブサイトの収集であり、今後のアンケート調査の基盤となるものである。第二がコンピュータ?ネットワーク上の宗教行為についてのインテンシブな調査である。そして、第三がホームページの製作運営者への直接の面接調査である。本論は、この第三の分類に該当する面接調査から得られた資料を中心に、布教用ホームページの効用についての議論を展開するものである。特に本論においては、面接の対象を広島県内に拠点を持つ宗教的ホームページ主催者に限定している。これによって、インターネットと言う新たな情報メディアが社会に付加されることによって、広島県の既存の宗教的な構造がいかに変化するものであるかを捉えようとするものである。 1.2　宗教ウェブサイトを取り巻く環境 この調査の前提として、広島県の現実の宗教構造、特に浄土真宗の勢力を簡単に把握しておきたい。広島県は「安芸門徒」の言葉で知られるように、浄土真宗特に本願寺派（西本願寺）の勢力が圧倒的に強い地域である。例えば、広島県内の仏教系宗教法人として登録されている寺院は平成9年のデータで1740である。一方で浄土真宗本願寺派の広島県内の寺院数は平成5年のデータでは791で、全寺院数の45.5％を占めている。実質的には、休眠法人を差し引き、他派の真宗寺院もこの数字に加わるため、全寺院数の半数以上を浄土真宗系の寺院が占めている。この数字は全国の寺院数に対する浄土真宗本願寺派の寺院数の割合13.4％（10343/77120）に比べると圧倒的に多いことがわかる。この浄土真宗の寡占状況は、農村部ではより強固で、浄土真宗の一村一家寺の体制ができあがっている。こうした状況からも、県民の半数以上が、浄土真宗の門信徒であることがうかがえる。そこで本論では、広島の既存の宗教構造を捉える上で、浄土真宗系対それ以外の枠組みを前提として調査を行っている。 一方で、宗教的ホームページの現状はどのようなものであろうか。1996年の段階での国内４万のウェブサイトを収録した『日本のホームページ40000』には、宗教に分類されるウェブサイトが９０件掲載されている。1999年現在サーチエンジン登録のウェブページ?ベースで1700万件に増えたウェブサイトの総数に比例して、宗教関係のウェブサイトにも同様の顕著な増加を見ることができる。検索エンジンYahooに登録される宗教関連のウェブサイト数は1455件で、1996年の前出の資料より16倍の伸びを示している。 無論今回の主たる調査対象である、浄土真宗系のウェブサイトも顕著な増加を示している。1997年4月10日付けの浄土真宗本願寺派内の機関紙である「本願寺新報」には「お念仏の声をインターネットに！」と題された特集記事が組まれている。この中で掲載されている、「本願寺派関係ホームページ」には全国で25件のウェブサイトが掲載されている。その内広島県関連は今回インタビューを行った正善寺、正法寺、円龍寺、耕三寺の４件のみであり、12件を対象とした今回の調査までに３倍の伸びを示している。この点からも、地域内の宗教的な構造を捕らえる上でも、インターネットに関連した要素が看過できない状況になりつつあることがわかる。 1.3　調査方法 こうした目的から、今回は広島県内に拠点を持つ宗教的ホームページ主催者に対して面接インタビューを行い、そのウェブサイトのおかれている環境を総体的に把握することに努