第12 章化学浸食と物理浸食の関連付け.docVIP

第12章　化学浸食と物理浸食の関連付け 堆積物と地質学的記録 　地質学的な歴史は、堆積岩に記録されている。その記録は、化石、化学的堆積物、および砕屑性堆積物という3つの主要な形態をとる。化石は過去の環境について、とくに現在との類似や個体群モデルを基に仮説を発展させることができるならば、かなりの情報を包含している。化石は、顕生代またはおおよそこの5.5億年間について最もよく使える。化学的堆積物は、それらを沈殿した水の組成についての情報を記録している。その情報は、堆積物の鉱物組成および、堆積物へ取り込まれた同位体や微量元素の形で存在する。この記録は、沈殿後の化学的変化－続成作用－によって不明瞭にされる。地質年代が増すにつれて、続成作用による情報の重なりが、記録を解読するのにさらに重大な障害となる。化学的堆積物は、海水や塩湖のようなさらに濃縮された溶液から典型的に沈殿する。炭酸塩や硫酸塩や塩化物のような鉱物が、これらの堆積物の大半を形成している。淡水環境からの最も重要な化学的堆積物は有機物－泥炭や石炭－である。砕屑性堆積物は、普通、水や風や氷河により運ばれた固体粒子の堆積により形成される。大部分の堆積岩は砕屑性である。これらは、それらの組成に浸食環境の情報を、そしてそれらの堆積の組織と様式に堆積環境の情報を記録している。砕屑による記録の解釈は、水文的分級や運搬の間の中間的な蓄積、および続成作用により複雑なものとなる。 現在は異常である 　現在は異常である。もし我々が、現在を過去への鍵として使うならば、過去－たとえ紀元前7000年に始まった技術の時代の直前でも－に適用できるものから現在に特有な特徴を解きほぐさなければならない。初期の文明は数1000年にわたり地中海地域と南アジアにおいて浸食に影響を及ぼしたけれども（Judson, 1986; Lowdermilk, 1975; Hillel, 1991）、この2世紀における人類人口の劇的な増大は地表の外観に著しい改変を起こしてしまった（Hooke, 1994の図1）。これに対して、200万年～300万年間にわたる大規模な氷河作用が先行して起こった。そのような時折起こった氷河作用は、顕生代の全期間中にたった3ないし4回、地球に影響を及ぼしたと思われる。最後に、我々は2つの特に重要な造山作用であるヒマラヤとアンデスの隆起、および過去数1000万年以内におけるパナマ海峡の閉鎖によって影響を受けている。 　固体の浸食は、物理過程だけではめったに起こらない。大部分の岩石は堅くて凝集した物質であり、鉱物粒子は密接な化学的接触により、あるいは粒子間にある膠結鉱物により、互いに結合している。ほんのわずかな地質物質だけが、雨や風の作用に曝されると粉々になる位に弱く結合している。これらには、ある程度の未固結泥岩、黄土（レス；loess）、火山灰、崩積層、沖積層、湖成層、海浜砂、および土壌が含まれる。未固結の粗粒物質は浸食されないかもしれない、というのは風や流水は個々の粒子を持ち上げれないかもしれないためである。ある浸食過程は物理現象を通じて主に作用する。氷河作用、風による浸食、水路による浸食、霜による風化作用、岩すべり（rock slide）、および土石流（debris flow）は、大量の物質を分解または移動させる物理現象の例である。 　多くの環境で、もっとも未固結の地質物質においてさえ、いったん植生が確立されると、物理浸食速度は劇的に減少する。浸食速度が速くなるためには、植生が欠乏することが必要であるように思える。例えば、中国の黄河は堆積物を海洋へ1.1×109トン／年の速度で運搬している（Milliman et al., 1987）。浮遊堆積物の平均濃度は18 kg/m3である。中国内陸部の黄土高原の急速な浸食が、堆積物を産みだしている。この浸食は自然の状態でのできごとではない。Milliman et al.（1987）は、5,000年間の文書の記録、河川氾濫原に関する層序的研究、および南シナ海からのボーリングコア試料を用いて、黄河についての堆積物排出量を復元している。10,000年前から7,000年前にかけて、排出量は現在の20％であった。7,000年前から3,000年前に、黄土高原が厚く植生に覆われるようになると、速度は現在の10％に落ちた。初期の人類による利用および、おそらく気候変化によって、紀元前200年には排出量は現在の35％に増加した。それから、排出量は現在の80％まで急速に上昇し、モンゴル人侵略まで、高いままであった。次いで、現在の50％まで堆積物排出量の低下が起こった。西暦600年に、集約的な農業が再確立され、堆積物排出量は現在の速度まで上昇した。 枠組みを提供すること：定常状態の浸