良質なサービス付き高齢者向け住宅の適正な整備に向けた課題.PDFVIP

346 Vol.47 No.4 良質 なサービス付き高齢者向け住宅の適正 な整備 に向けた課題 井 上 由起子 を共有化して暮らす自宅となる。高齢者ケアでは Ⅰ はじめに 自宅での継続居住がまずもって目指されるが，多 様な住まいの保障が地域包括ケアの前提であるこ 周知のとおり，我が国の高齢者ケアは地域包括 とからも明らかなように，地域包括ケア圏域内で ケアシステムに向けて歩みを めている。地域 の転居は否定されていない。 包括ケアシステムとは，「住居の種別にかかわら 地域包括ケアの基礎にあるいまひとつの重要な ず，おおむね30分以内（日常生活圏域）に生活 概念が，自助・互助・共助・公助の役割分担と連 上の安全・安心・健康を確保するための多様なサー 携である。現在のところこれらは断片化された状 ビスを24時間365日を通じて利用しながら，病院 態にある。連携と協働において特に重要と考えら などに依存せずに住み慣れた地域での生活を継続 れるのが，①共助のなかでの医療と介護の連携， することが可能となっている体制」 〔地域包括ケ ②互助の醸成と互助と共助の連携である。政策レ ア研究会 2011，p.18〕を指す。ここで示されて ベルで扱われてきたのは①であり，介護報酬や診 いるようにその実現にあたっては，基盤としての 療報酬において評価され，連携強化が図 られてき 住居が保障されていることが前提となる。「福祉 た〔筒井 2011，p.18〕。②については，互助は は住宅にはじまり住宅に終わる」という考え方が 所与のものではなく期待するものに ぎないため ようやく日本でも浸透してきたといえよう。 〔池田 2011，p.240〕，政策に位置づ くことなく 高齢期の住居はサービス付帯の仕組みから，自 今 日を迎えている。しかしながら，自宅と施設の 宅，住宅系サービス，施設系サービスの三つに大 中間に位置する高齢者住宅の登場 によって，施設 別される。施設系サービスとは24時間365日にわ では介護保険で給付されている生活支援サービス たって介護職がインハウスで配置されているもの が，介護保険から切 り離 されて住宅の付帯サービ を指し，介護保険施設のほか認知症高齢者グルー スとして用意されることとなり，この機能を自助・ プホーム（以下，認知症高齢者GH），一般型特 互助・共助・公助のいずれに委ねるのかが大きな 定施設を指す。これに対し，住宅系サービスとは テーマとなりつつある。どのような方向性を目指 生活支援サービスのみをインハウスで付帯させ， すかは，共助に著 しく比重が置かれた現在の状況 介護は居宅の仕組みで届けるものを指す。サービ をどう解釈するのかにもよろう。 ス付き高齢者向け住宅のほか，住宅型有料老人ホー 以上を踏 まえ，本稿では我が国の住宅政策を概 ム，ケアハウス，シルバーハウジングなどが該当 観 し，2011年 10月から登録がはじまったサービ する。自宅は所有形態から持家，民間賃貸，公的 ス付き高齢者向け住宅の概要