高齢化社会と労働市場 - 公益社団法人 日本オペレーショ ….PDFVIP

高齢化社会と労働市場 八代 尚宏 ∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥＝＝∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥＝∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥＝＝＝∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥川∥∥∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥＝∥∥∥∥∥∥∥＝∥∥川Il………l…∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥＝∥∥川∥∥ どが懸念されている．しかし，高年齢者が即ち，高賃 はじめに 金・低生産性労働者であるという前提は，既存の社会 人口高齢化，即ち，人口全体に占める高齢者（一般 制度によって作られた面も大きい．例えば，過去の平 に65歳以上）比率の高まりの影響をもっとも早く受 均寿命の伸長にもかかわらず，60歳で一律に定年退 けるのは労働市場であり，その影響度も大きい．人口 職を迫る雇用慣行は，その一例でもある． 高齢化は，先進国に共通した問題でもあるが，とくに 社会保険制度における受給者比率や労働市場におけ 年齢に大きく依存した日本の雇用・賃金制度は，大き る高年齢者比率の傾向的な高まりは，いずれも年齢だ な圧力を受けている．高齢化は，新たな問題を引き起 けで人口を二分する現行の画一的な社会保険や雇用制 こすよりも，既存の社会制度の持つ問題点を，いっそ 度から派生している．これを年齢や性別に関わらず， う深刻なものとすることに，その大きな特徴がある． 個人の仕事能力に応じた雇用機会や報酬体系を実現で 従って，高齢化によって生じる諸問題に対応するため きる流動的な制度への車云換を進め，「年齢・性別から には，現行の日本の社会制度の抱える矛盾を明らかに することが大前提となる． とが，高齢化社会への基本的な対応の方向である。 人口高齢化の労働市場への影響は，まず，少子化に 以下では，こうした考え方に立って，労働市場にお よる若年労働力の減少と，中高年労働者比率の高まり ける高年齢者の雇用問題，既婚女性の雇用問題，およ とに分けて考える必要がある．1975年以来の長期的 びこれらに対応した雇用制度改革の方向，の順で検討 な傾向である出生率の低下により，すでに生産年齢 する。 （15－64歳）人口は，95年をピークとして減少を始め 1．高齢者就業の重要性 ている．これは，今後，長英舶勺に持続する過程であり， 70年代の年間100万人の増加ペースと比べて2000年 ・弾力的な高齢者の定義を 以降は逆に50万人の減少が見込まれている．この結 日本の65歳以上人口は，1950年代には全体の5％ 果，今後，女性の就業率の上昇を見込んだとしても， に過ぎなかったが，2000年には17％へと急速に上昇 2005年以降の労働力の減少は不可避となっている． する．これが高齢化のピーク時の2050年には33％と 労働者の減少は，同時に消費者の減少でもあり，生産 さらに倍増することが見込まれている．しかし，その 活動を需要と供給の両面から縮小させる要因となる． 時点でも，75歳以上人口の比率は18％にとどまる． 労働者は税・社会保険の拠出者でもあり，その持続的 これは，仮に「高齢者」の定義を，現行の65歳以上 な減少は，一人当たりの所得が伸び悩むなかで負担額 から75歳以上へと，今後50年かけて引き上げて行け の傾向的な増加をもたらす要因となる． ば，高齢化の社会的