後天的亜鉛欠乏症における毛髪および爪甲内亜鉛.PDFVIP

日皮会誌:90 (5),449-451, 1980 (昭55） 後天的亜鉛欠乏症における毛髪および爪甲内亜鉛 花　田　勝　美 山　本　雅　章 　　　　　　　　　　　要　　旨 　面・陰部・四肢末端の紅斑，麿爛，水庖～膿庖，爪囲 　 中心静脈栄養施行中みられた後天的Ｚｎ欠乏症３例に 　炎）を呈し，経静脈的（Zn量1～2mg/日）または経口 ついて，毛髪，爪甲内Ｚｎの経時的変化を観察し，併せ 　的（Ｚｎ量45mg/日）Ｚｎ療法にて速やかに皮疹は軽快し て，患者毛髪の光顕的観察，健常人毛髪断面のＺｎ元素 　ている．なお，いずれも治療開始レ 分析を試みた．その結果，Ｚｎ療法後，毛髪，爪甲のZn 　に著明なBeaus line を認めている． は血清Ｚｎに平行して上昇する傾向がみられ，とくに爪 　　２．実験方法 甲ではBeaus line の出現を境として上昇を示してい 　　毛髪は初診時，10週後，20週後，30週後の４回に分け た．患者毛髪では毛髄の消失が著明であったが，健常人 　ておのおの後頭部から５ｃｍの長さで50～200mgを採取 毛髪におけるＸ線分析では毛髄にとくに高いＺｎ分布は 　した．爪甲は同様の期間をおいて第１指のBeaus line, みられず，Ｚｎ欠乏症患者毛髪のＺｎ低下が毛髄の消失 　およびその前後の部位30～lOOmgを経時的に採取した． によるものでないことが知られた．毛髪，爪甲内Ｚｎ測 ？試料は全てアセトソ・エタノール混合液にて洗浄し，＝ 定は，Ｚｎ欠乏症の生体内Ｚｎ蓄積を知る上で簡便な非 う測定は著者らの組織内Ｚｎの定量法に準じて行なった.3） 観血的方法と思われた． y,なお低温灰化にはヤマトPR-503型プラズマリアクタ∠ 　を，原子吸光法には日立170－50型原子吸光光度計を用 　　　　　　　　　　I･緒　　言 　いた．また，患者毛髪の一部を光顕的に観察するととも 　Acrodermatitisenteropathica （以下ＡＢ）では血清Zn 　に，健常人毛髪の断面，とくに毛髄，毛皮質における 同様，毛髪内Ｚｎの低下をきたす ことが知られてお丿）， 　Ｚｎ分布をＸ線微小部検出装置(JSMU 3-SDS, JSM 35- またＡＥおよび後天的Ｚｎ欠乏症（以下ＡＺＤ）ではし 　ＤＤＳ分散型装置）を用いて観察した. ばしば指趾の爪甲に横構 (Beaus line)が観察されるこ 　　　　　　　　　　III.　結　　果 とが報告 されている.2）今回はBeaus lineが明瞭に認め 　　３症例の毛髪内Ｚｎ濃度の推移はFig. 2 に示した如 られた後天的Ｚｎ欠乏症の ３例を経験し(Fig. 1），その 　くであり，おのおのの毛髪採取時における血清Ｚｎ値を 毛髪および爪甲内のＺｎを経時的に測定し得たので以下 　同時に示した．また，爪甲内Ｚｎの推移はFig. 3 に示 に報告する. 　した． 　　　　　　　　　II●　対象と方法 　　患者毛髪の観察ではしばしば毛髄の消失が認められ 　１．対象 　たが(Fig- 4A），健常人毛髪断面におけるＸ線分析では 　毛髪および爪甲を採取し得た３症例は54歳．女性，54 歳．男性，46歳．女性で，受診時までにおのおのShort bowel syndrome で１ ヵ月, Esophageal cancer で ５ヵ 月, Ano