触媒酸化法.pdfVIP

4.4 触媒酸化法 4.4.1 触媒酸化法とは 触媒は化学工業の広い分野にわたり、従来より使用されてきた。昨今では、公害防止という 身近な問題の解決に触媒が広汎に利用されるようになっている。例えば、自動車のマフラーや 工場の排気ライン等に設けられた触媒酸化装置が公害防止に役立っている。 昔から使用されている“ 白金カイロ”は白金付ガラス綿が用いられ、これでベンジンまたはア ルコールが白金の触媒作用により、低温度で酸化分解するようになっており、火災等を生じる ことなく安全に利用されている。 触媒酸化法はこの現象を利用したもので、低い温度で下式の様に炭化水素 （有害物質／可燃 性物質）を無臭無害の水蒸気と二酸化炭素に酸化分解処理する。 炭化水素 酸素 触 媒 二酸化炭素 水蒸気 触 媒 C H O ＋ O CO ＋ H O X Y Z 2 2 2 低温度 低温度 無触媒の燃焼方式でも排ガスを 650～800℃に加熱し、適切な滞留時間 (0.5～1.0 秒程度) に保持すれば、上式の酸化分解反応は起こる。一方、触媒酸化方式では排ガスを200～400℃ に加熱し、0.05 秒程度、触媒に通過させるだけで、同様の酸化分解反応を起こす。このよう に、触媒酸化方式は他の燃焼方式に比べ、低温かつ反応速度が速いため、設備費、運転コスト は安価である。また、低温酸化のため、Thermal NOＸの生成も極めて少ない。 しかし、排ガス中に触媒を劣化させる物質（触媒毒等）が混入されていたり使用温度を誤 ると性能は低下するため、排ガス成分の事前調査を十分に行うことが重要である。 4.4.2 触媒の種類 （1） 最適な触媒の選定 酸化触媒には種々の金属、種々の形状のものが使用されているが、下記の事項を基準に選 定することが重要である。 1）低い温度で酸化処理できること 2）大きなSV値(（3）項参照)がとれること 3）圧力損失が低いこと 4）長い寿命をもっていること 5）目詰まりしにくいこと （2）触媒金属の活性序列 触媒金属の種類によって、酸化活性は異なる。下記に各種ガスに対する活性金属の酸化活 性序列を示す。 (活性) 高 低 メタン ： Pd, Pt, Co, Cr, Mn, Cu, Ce, Fe, V, Ni, Mo, Ti プロパン ： Pt, Co, Cr, Pd≒Mn, Cu, Ni, Fe, Ce≒Th プロピレン ： Pt, Pd, Ag, Co, Cu, Mn, Cr, Cd, V≒Fe≒Ni, Ce, Al, Th 水素 ： Pd, Pt, Ru, Ag, Co, Au, Ni, Cu, Mn, Fe, Cr, V 一酸化炭素 ： Pt≒Pd, Mn, Co, Cd, Ag, Cu, Ni, Sn, Zn, Ti, Fe 77 触媒金属には大きく分けて白金･パラジウム等の貴金属系とマンガン･鉄等の卑金属系が あるが、特に白金･パラジウムは各種ガス成分に対して活性が高い傾向にある。 （3）触媒の形状 触媒の形状には表 4.4.1 に示すとおり、ハニカムタイプ、ペレットタイプ、金属発泡体等 があり、それぞれ特徴を持っている。近年では、高いSV 値（触媒量が少なくてすむ）がと れ、圧力損失が低く、目詰まりが起こりにくいハニカムタイプの白金系触媒が幅広く適用さ れている。