骨粗松症H21.9-hospinfo.tokyo.PDFVIP

No.9５（H21.９） 東京医科大学病院 薬剤部 こつそしょうしょう 骨粗鬆症 とは骨の量が減少することにより、骨の強さが低下し、骨折し やすくなった状態といわれています。その原因としては、ホルモン分泌量の もろ 変化や、カルシウム摂取量の不足、運動不足などが考えられています。骨が脆 くなると、背骨が曲がってしまい円背になることがあります。そうすると、 その影響は内臓にも及んでしまい肺や胃腸に負担をかけ逆流性食道炎や肺炎 を起こしやすくなってしまいます。また、大腿骨を骨折してしまうと長い間 寝たきりの状態になって しまいます。現在の日本において、骨粗鬆症の患者 数は約１，２００万人と推定されていますが、そのなかで、治療を受けてい る方は約２００万人しかいないといわれています。 それでは、どうして骨は脆くなって しまうのでしょうか。そこには、骨の ひ し つ こつ かい 構造や代謝が深く関係しています。骨は、外側の壁となる皮質骨と内側の海 めんじょう 綿 状 の骨からなっています。この骨は、一度形づくられたらそのままとい うわけではなく、実は活発に新陳代謝を行っており、常に新しい骨に入れ替 は こつさいぼう わっています。この骨の代謝には骨を壊す破骨細胞といわれる細胞と骨を造 こつ が さいぼう る骨芽細胞という２つの細胞がバランス良く働くことにより行われていま す。つまり、最初に破骨細胞が古くなった骨を溶かして、次に骨芽細胞が新 しい骨を造るというわけです。例えていうなら、道路工事に似ているともい えます。こうした働きによって、私たちの骨は常に新 しく丈夫に保たれてい るわけです。ところが、いろいろな原因によりこのバランスが崩れてしまう と、骨を溶かす働きが骨を造る働きを上回ってしまい、結果として骨が脆く なってしまいます。 さて、骨粗鬆症に対する治療ですが、まずは食事療法などにより、カルシ ウムやビタミン D を充分に摂取したうえで、適度な運動をすることが重要で す。例えば、厚生労働省が推奨する日本人のカルシウム摂取量は１日６００ ｍｇといわれていますが、国民栄養調査の結果によると、実際のところはこ の基準を満たしていないようです。さらに閉経後の女性や高齢の方では、カ ルシウムの吸収が低下したりしているため１日１０００ｍｇ以上のカルシウ ムの摂取が必要といわれています。 しかしながら、カルシウムの摂取や運動だけでは骨折の頻度を充分に少な くすることは難しいため、いろいろな薬を使うことになります。そのなかで も高い評価を得ている薬にビスホスホネート系の薬剤があります。この薬は 破骨細胞の働きを抑えることによって骨が脆くなるのを防ぐ作用があります。 この薬の飲み方は普通の薬と違って、気を付けなければならないことが幾つ かあります。ひとつは、この薬は朝起きてすぐの空腹時に飲まなければなら ないことです。これは食事の影響により薬が吸収されにくくなることから、 その影響を避けるために起床した際の空腹時に飲むのが良いとされているた めです。次に、薬を飲む際には １８０ｍL 以上の充分な量の水で服用し、飲 んだ後の３０分は横になってはいけないことになっています。その理由とし ては、少ない水分で服用 したり、すぐ横になってしまうと、薬が食道や胃の 粘膜に付着してしまい、薬による刺激で食道や胃の粘膜に炎症をおこしたり、 かいよう ひどい場合には潰瘍になってしまう可能性が他の薬より高いといわれてい るためです。ただし、きちんと飲み方を守っていれば、こうした副作用が起 こる頻度は低いといわれています。 このビスホスホネート系の薬は国内に登場した頃には１日１回毎日飲むと いう飲み方