动物生态学animalecologye-mailyamada-ybio-三重大学生物.doc

動物生態学　Animal　Ecology　(e-mail：yamada-y@bio.mie-u.ac.jp) 生態学とは？ 　生物が周りの環境（生物環境を含む）とどのような関係を持って生存しているかを調べる学問である。 個体（individual）, 個体群（population），群集（community）, 生態系（ecosystem）の振舞いを研究する。 生態系：ある地域におけるすべての生物と非生物を対象とし，その生物間及び生物と非生物間の物質循環とエネルギー流をさす。 進化(Evolution) 進化とは，遺伝子頻度の時間的変化のことをいう。 ○近接要因（至近要因；proximate factor）と究極要因（ultimate factor） 　ある生物現象を引き起こす要因は，対象生物がその要因に直接反応して，その現象を起こさせる要因（至近要因）と，その現象によってもたらされる自然選択上の利点に関連のある要因（究極要因）に分けられる。どのように（how）して起ったかを説明するのに関連した要因（至近要因）と，なぜ（why）起ったかを説明するのに関連した要因（究極要因）とも言える。小鳥はなぜ初夏に繁殖するのか，の至近要因と究極要因は？ I．ハーディ-ワインベルグの法則(Hardy-Weinberg‘s law) 　以下の条件下では，遺伝子頻度は世代を経過しても変化しない(１遺伝子座２対立遺伝子の場合→資料)，つまり，遺伝的に平衡状態にある。逆に言えば，以下の条件が崩れたとき進化が起こる。 a) 集団の大きさは，無限あるいは実際無限と見なしてよいくらい大きい。→遺伝的浮動 b) 個体はランダムに交配する。→自然選択，（遺伝的浮動） c) 全ての対立遺伝子は，子世代に自分を残す能力において等しい。→自然選択 d) 他集団からの遺伝子の移入あるいは他集団への移出がないこと。→遺伝子流（遺伝子流動ともいう；gene flow） e)　突然変異(mutation)がない II.　自然選択（Natural selection） 　集団（population）が次の３つの性質を持っているとき， a)ある特性（形質）に関して変異がある b)その特性が適応度（生存率，繁殖能力）と関連がある。 c)その特性は遺伝する。 　１世代の間で，その特性を持っている個体（対立遺伝子，集団，種，クレード（clade, 同じ種に起源を持つ種のセット））と，そうでない個体で，生存率または子供の数に差が生じ，その結果，親世代と子世代の特性が変化する。この過程を自然選択という。 　自然選択は，進化（evolution）を引き起こす１つの機構であり，自然選択＝進化ではない。 III．自然選択の種類（資料） 1．安定化選択(stabilizing selection; balancing selection) 　ヒトの新生児の出産時の体重（資料） 2．方向性選択（directional selection） 　トウモロコシ粒の油含有率の人為陶汰(F-1a) 3．分断選択（disruptive selection）F-1a 　アフリカのカエデチョウの一種における嘴の幅（餌である植物の種に２種類ある） IV.　自然選択の単位 上記のa), b), c)の条件を満たせば，遺伝子からクレードのあらゆるレべルで自然選択は起こり得る。各レべルの選択は同時に起こるが，選択の方向性においてレべル間で同じ場合もあるが異なる場合もある。異なる場合，通常は個体単位の自然選択が起こる。この意味での自然選択の単位を相互作用子(interactor)または乗り物（vehicles）という。これに対して，Williams(1966)とDawkins(1976)は，どのレべルの選択が働こうとも，最終的には特定遺伝子の頻度の増加に結びつくのであるから，選択の単位は遺伝子であると主張した。この意味での自然選択の単位を複製子(replicators)と言う。しかし，遺伝子間では通常差は現れず，差は細胞，個体レべル以上で生じているのであるから，対象となる形質の適応性を調べるには相互作用子が何かを調べる必要がある。 上位のレベルの選択が働きやすくするための条件は、上位レベルの選択単位を構成する下位レベルの選択単位の血縁度が非常に高いこと，あるいは下位レベルの選択単位の移動分散が簡単にできないことである。現在見られる多細胞生物個体中の遺伝子、細胞は、この条件に合い、通常、個体より下のレベルの選択が働くことはほとんどないと考えられる。しかし，以下に示すように，状況によっては遺伝子，細胞レベルで選択が働くことがある。 1．遺伝子選択 細胞内に閉じこめられた遺伝子は、そこを飛び出て増殖することは不可能で、遺伝子レ