《悟净叹异》之悟净论.docVIP

PAGE PAGE 12 《悟净叹异》之悟净论 摘要：中岛敦以中国古典作品为素材，创作了数篇描写近代人自我意识的作品，具有较高的艺术价值。《悟净叹异》取材于《西游记》，虽然目前尚未得到研究者的重视，却是一部特别的作品。既带有中岛敦一贯的怀疑色彩，同时在自我存在的意义和人生的探究方面显现出鲜有的亮色。因此，本稿希望对文本进行细致解读，从空间和时间两个角度考察悟净看到的世界，然后通过对比悟净和悟空、悟空和三藏法师，阐明悟浄探索人生方向的轨迹，最后在思想和创作方法的层面揭示悟净和中岛敦的关系。 关键词：中岛敦悟净叹异悟净论 『悟浄歎異』における悟浄論 主旨: 中島敦は中国の古典を素材に、近代人の自意識を描く芸術性の高い作品を残している。今までの研究では、『西遊記』を基にした『悟浄歎異』はあまり重視されていないが、中島作品を貫く懐疑的色彩を帯びながらも、自己存在の意味と人生の追究には、珍しく明るさが見える特別の存在である。そこで、本稿はテキストに対する細かい読解によって、空間と時間という二つの角度から悟浄の見る世界を考察し、そして、悟浄と悟空、悟空と三蔵法師の比較を通して、悟浄が自分の生の方向を追究した軌跡を明らかにし、さらに、思想と創作方法の面から悟浄と中島敦の関係を解明したい。 キーワード: 中島敦悟浄歎異悟浄論 論文正文 ―、はじめに 中島敦は日本の昭和時代の作家で、中国の古典に題材を求めながら、西洋の文学、哲学の影響を受け、自己存在の不安に悩んでいた近代人の自意識を描く芸術性の高い作品を残している。その代表作『山月記』、『李陵』などが高く評価され、日本の高等学校の教科書にも採用されている。 今までの中島作品の研究において、『悟浄歎異』はあまり重視されていないが、実は特別の存在で、中島作品を貫く懐疑的色彩を帯びながらも、自己存在の意味と人生の追究には珍しく明るさが見える。『悟浄歎異』を対象にする先行研究では、佐々木充、濱川勝彦、奥野政元などの研究者たちがそれぞれ優れた見解を述べているが、作品の奥深さから見ると、もっと細かく分析すべきところがある。そこで、本稿は空間と時間という二つの角度から悟浄の見る世界を考察し、そして、悟浄と悟空、悟空と三蔵法師の比較によって、悟浄が自分の生の方向を追究した軌跡を明らかにし、さらに、思想と創作方法の面から悟浄と中島敦の関係を解明したい。 二、『悟浄歎異』について 『悟浄歎異』は中国の四大奇書の一『西遊記』に取材した作品で、後に書かれた『悟浄出世』とともに、中島敦の第二作品集『南島譚』に収められているが、この二篇が『わが西遊記』と名付けられたところからも、「僕のファウストにする意気込なり」という友人の田中西二郎宛ての書簡からも、中島敦が自分ならではの西遊記を作ろうとした作家としての自信と意欲が窺える。 中島敦が直接参照したのは『絵本西遊記』であったと佐々木充が指摘している。それを受け、濱川勝彦が『悟浄歎異』と『絵本西遊記』の比較を通し、『悟浄歎異』は「『絵本西遊記』とは直接関係なく、『西遊記』という伝奇の世界の大きい枠と、個々の断片的事件とを借り、その中で中島敦の世界を展開したもの」であると主張している。具体的に言うと、『悟浄歎異』は悟空、三蔵法師、八戒及びその生き方に対する悟浄の観察、思索、批評、そして、自身の反省からなっている。その内面的な描写こそが『悟浄歎異』の独自なところである。 三、悟浄の見る世界 （一）空間的無限 上記のように、『悟浄歎異』において悟浄が観察者として他の三人の生き方を批評する形になっているので、その批評から悟浄自身が置かれる世界への思索も窺えるのではないか。この点について、まず、三蔵法師から見てみよう。 自己防衛の本能がないほど弱い三蔵法師だが、「大きなものの中における自分の（あるいは人間の、あるいは生き物の）位置を――その哀れさと貴さとをハッキリ悟っておられる。」 その「大きなもの」はまさにどこまでも広がる不可解な世界である。そこに置かれるごく小さな人間に存在の不確かさ、不安感、虚無感を与える世界である。三蔵法師が世界を見つめて、自分の位置を悟ったからこそ、その「悲劇性」を感じられるのだが、その人間と世界の関係を意識することそのものが哀れさでありながら、人間としての貴さでもある。 一方、自己及びその運命に対する自信が溢れていている孫悟空でも、如来に五行山の下に押し込められたという忘れられない怖ろしい体験があった。それは、「自分の力の限界を知らなかった」からである。如来の掌から飛び出せないとの驚き、さらに、その掌が「天をも隠すかと思われるほどの大きさ」に拡がって、のしかかってきた時に悟空が覚えた「総身の血が凍るような恐ろしさ」から見ると、この「如来の掌」はまさに