振動センサを利用した雪崩発生検知システムの開発.pdfVIP

〆 11 本 ;i jJ t 会誌雪氷 62 4 り (200017 JJ) 367- 374Ji 論文 振動センサを利用した雪崩発生検知システムの開発 飯倉茂弘 I) ，河島克久 2) ，遠藤 徹2) ，藤井俊茂 1) 要旨 鉄道を雪崩災害から守るためには，さまざまな雪崩予防工や防護工を設置するハード対策とともに， 場所によっては雪崩の発生を的確に検知し，列車の運転を確実に抑止するソフト対策も必要である. そこで本研究では，雪崩発生時の適切な列車の運転抑止と迅速な点検・除雪作業を支援する雪崩発生 検知システムを開発した.このシステムの雪崩検知方法は，雪崩危険斜面を有する線路の脇に検知ポ ール(小型振動センサ内蔵)を設置し，雪崩発生時に雪がポールに当たることによって生じる振動を とらえて雪崩を検知するものである.この方法の特徴は，検知原理が単純であり，その結果，簡単か っ安価にシステムを構成できることである.本システムは，雪崩の発生を検知する機能に加えて，発 生した雪崩の規模に応じた 4 段階のレベルの警報を出力する機能を有しているので，列車の運転抑止 に有用であるのみならず，警報レベルを保線区等の監視局に伝送することによって，現地の線路除雪 作業や点検作業の必要性の有無およびそれらの作業規模等を早期に判断することができる.本システ ムを黒部¦峡谷の雪崩多発地に設置し，一冬季聞を通して稼動試験を行った結果，発生した全ての雪崩 を正常に検知でき，実用性の高さが確認された. キーワード:雪崩発生検知システム，列車の運転抑止，雪崩規模，線路除雪 Keywords: snow avalanche detection and alarm system ，suspended train operation ，scale ofavalanche ， permanent snow removal 1. はじめに 雪崩発生現場の点検・除雪体制を迅速に整える上 鉄道沿線における雪崩の発生は小規模でも重大 での判断を支援することができる.本論文では開 事故につながる可能性があるため，雪崩の危険斜 発したシステムの雪崩検知方法や雪崩規模の評価 面の多くにはさまざまな雪崩対策工が設置されて 方法などの特徴を述べるとともに，フィールドに いる.しかし，雪崩対策工のみで、延長が長い鉄道 おける稼働試験の結果に基づき，その実用性能を を完全に雪崩の被害から守ることは不可能であ 示す. り，場所によっては雪崩の発生を誤動作なく的確 に検知し，列車の適切な運転抑止を行う必要があ 2. これまでの雪崩発生検知の方法 る.そこで著者等は，振動センサを用いだ簡易な 日本の鉄道では，雪崩危険斜面の線路脇に支柱 手法で雪崩の発生を検知するシステムを新たに開 を立て，そこに張られた電線が雪崩の通過によっ 発した.このシステムには雪崩の発生を検知する て切断されることで雪崩を検知する雪崩警報装置 機能のみならず，発生した雪崩の規模に応じた段 が古くから使用されており(川瀬， 1942)，現在 階的な警報を出力する機能をも付加させており， でも一部の線区に設置されいる(図 1). この方 式は，電線を長く張ることにより検知すべき延長 1) miJ 鉄道総合技術研究所防災技術研究部