「転嫁対策特別措置法案」についての意見-dti.docVIP

消費税転嫁対策特別措置法案 立教大学名誉教授 舟田　正之 2013年5月20日記 ＜意見概要＞ 今国会に上程され審議中の、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための特定事業者による消費税の転嫁の拒否等の行為の是正等に関する特別措置法案」（以下「転嫁対策特別措置法案」） １．消費税の転嫁拒否等行為 ２．「消費税消費者の誤認を招き，他の事業者による円滑な転嫁を阻害する宣伝?広告等 これらは、消費税 しかし、これら諸規定の実際の運用、公正取引委員会の任務?性格など、検討すべき課題がある。 Ⅰ．本法案の経緯およびポイント （１）消費税消費税法 現行の消費税。 しかし、本小論では、これらの問題を取り上げるものではなく、来年（2014年）4月からの税率の引き上げにあたって、新しく制定されようとしている上記の「転嫁対策特別措置法案」消費税の転嫁拒否等転嫁を阻害する宣伝?広告等 同法が1989年に施行されたときは税率3％であった。1997年に5％に引き上げられている。 昨年8月に、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」（平成２4年法律第68号。以下、「一体改革法」と略記）が成立した。 これにより、消費税率は、２０１４年４月には８％、１５年１０月には１０％に引き上げられることになる。 （２）　今回、一体改革法が議論されていた当時から、中小企業の下請事業者や、大規模小売業者に納入する中小企業などから、増税分を転嫁することが困難だという指摘があり、今回は政府としてこれに対応することとされた。 そこで、一体改革法それ自体に、次の規定が置かれた（7条1号ニ）。 「消費税---- の円滑かつ適正な転嫁に支障が生ずることのないよう、事業者の実態を十分に把握し、次に定める取組を含め、より徹底した対策を講ずる。 (1)　消費税の円滑かつ適正な転嫁に資するため、事業者等が消費税の転嫁及び価格表示等に関して行う行為についての指針を策定し、その周知徹底を図り、相談等を行うこと。」（以下、略） （３）今年３月法案 本法案は、以下の4本柱からなる。 ①消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置消費税の転嫁拒否等の行為を取締り、当該行為を是正又は防止するために必要な法制上の措置を講じる。 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置消費者の誤認を招き，他の事業者による円滑な転嫁を阻害する宣伝?広告等を是正又は防止するために必要な法制上の措置を講ずる。 価格の表示に関する特別措置消費税の総額表示義務について，表示する価格がその時点における税込価格であると誤認させないための措置を講じている場合に限り，税込価格を表示することを要しないための必要な法制上の措置を講じる。 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置事業者又は事業者団体が行う転嫁カルテル及び表示カルテルについて，消費税導入時と同様の独占禁止法の適用除外制度を設ける。 （４）消費税においては、納税義務者は事業者であるが（消費税5条）、その実質的な負担者は消費者である。そのために、現行の消費税法は、「仕入税額控除」方式の下で、ある商品の流れを川上から川下へと、製造、卸、小売り等の各取引段階の事業者において、次々に転嫁することが予定されている。（下の財務省サイトにある図を参照） https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/301.htm 1988年に、消費税法税制改革法（昭和年法律第号）。 ?　「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする。その際、事業者は、必要と認めるときは、取引の相手方である他の事業者又は消費者にその取引に課せられる消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとする。 （５）消費税法私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律昭和22?11?20?法律号廃止平成11?６?23法律号。 今回の引き上げに当たっては、これらの措置では不十分であるとの批判があったこと、平成16年の「総額表示義務」導入後、はじめての引き上げであり、また、2014年と2015年の2段階での引き上げということから、過去の措置では不十分とされ、本法案によって十分な対応を試みることとされた。 Ⅱ．消費税の転嫁拒否等 本法案の前記4本柱のうちの①の消費税の転嫁拒否等の行為転嫁拒否 「特定事業者」とは、①「大規模小売事業者」、および、②資本金の額又は出資の総額が3億円以下の中小企業等から「継続して商品又は役務の供給を受ける」、法人事業者を指す（2条1項）。 「特定供給事業者」とは、上記の①大規模小売事業者に、継続して商品又は役