研究課題「高齢者見守りシステムと福祉コミュニティ構.PDFVIP

研究課題： 「高齢者見守りシステムと福祉コミュニティ構築プロセスの研究」 ―被災地における高齢者生活支援の試み― 代表研究者：峯本 佳世子 （大阪人間科学大学教授） １．はじめに 平成７年１月１７日の阪神淡路大震災から１０年が経ち、被災地の街や住宅、道路などが復興 してきたが、この５年間になお３１６人の孤独死があるという報告は被災地に今も残る傷跡を表 している。仮設住宅から復興住宅への転居は、被災高齢者にとってより深刻な孤立を招き、心身 ともに弱っていく高齢者への安否確認や見守りなどの必要が叫ばれ続けてきた。 本研究では、激震被災地・神戸市において復興住宅やシルバーハウジングの高齢者を中心に安 否確認や生活支援を行う地域見守り推進事業の４年間の活動成果を検証し、超高齢社会の地域見 守りシステムと福祉コミュニティの構築を展望する。 ２．被災地の高齢者支援と見守り推進事業 被災地では、復興公営住宅の高齢化率の高さが軒並み 40～50％、もっとも高い住宅では 60％ を超えている。神戸市では復興住宅を中心に、高齢者の孤独死や生活不安の軽減、ひいては高齢 化した地域社会の助け合い、そして福祉コミュニティづくりのために地域見守り推進事業を立ち 上げた。地域見守り推進事業を担う見守り支援者は以下の３者である。 ① 見守りサポーター ② ＬＳＡ（生活援助員） ③ 見守り推進員 見守り推進員は、直接訪問する見守りサポーターおよびＬＳＡを統括し、民生委員等の地元関 係者と行政・専門機関との連絡調整や連携を図り、あらたなコミュニティづくり、ネットワーク づくりを担い、小地域見守り連絡会を開催する。本事業は、神戸市が各区社会福祉協議会（区社 協）を通じて在宅介護支援センターに委託をして、全市の中学校区にある在宅介護支援センター ７７ヶ所にセンター運営法人の職員を見守り推進員としてひとりずつ配置し、区社協の地域福祉 活動コーディネーターが、本事業に関するセンターの統括・支援等をおこなう。 （図１） これら見守り支援者の４年間の活動調査の中から、中心的役割を果す見守り推進員の調査結果 を報告したい。 ３．見守り推進員の活動の成果と課題 （１）第１回 調査の概要 調査対象：見守り推進員７６名を対象、うち回答を得られたもの７４名 調査時期：平成１６年６月 調査内容：基本属性、見守り推進員の活動、対応困難の内容、活動の問題点、 やりがいや成果、今後の課題など質問肢２６項目 （２）第１回 調査の結果 地域見守り活動推進事業を担う見守り推進員は、女性が約８４％、約男性１５％で、女性がほ とんどを占めており、年齢層は２０歳代約３０％、３０歳代約２０％、４０歳代約３０％、５０ 歳代約１８％と幅広い。資格については、約６０％がホームヘルパー資格、２４％が介護福祉士、 ２０％が社会福祉士、介護支援専門員も１０％近くある。在籍年数については、「３～４年」つま り事業開始より継続して推進員として務めているのは４分の１強にとどまっている。「１～２年」 「１年未満」の短期の人は半数にのぼり、推進員の移動が多い。 支援活動の取り組み状況については、活動の割合が「高い」「やや高い」と回答したものをあわ せた数字でみてみると、「民生委員や地域ボランティアとの連携」が最も多く、ついで「行政や関 係機関との連絡調整」「高齢者生活情報等の提供」「小地域見守り連絡会の開催に関する業務」「高 齢者情報の収集・管理等」となり、推進員の業務において民生委員やボランティアとの連携の重 要性が改めて確認できた。（図２） 訪問活動においては、推進員の約９０％以上が対応困難な世帯を訪問している。対応困難な世 帯を多く抱える推進員については、特に専門家につなぐなど他の専門職と連携して対応していく 必要がある。対応困難といわれる世帯のもつ主な生活課題は、「認知症高齢者の問題行動など」「精 神疾患等の問題」 「アルコール依存症の問題」があげられている。その他の生活課題として、「サ ービス拒否」「閉じこもり」「訪問拒否」などがある。 見守り推進員活動の「やりがいのあったこと」「よかったこと」の自由記述で得られた回答に、 地域見守りという点において、地域との信頼関係、地域団体や関係機関との連携、地域住民間の 見守り意識の向上があげられ、発足当初、地域との関係づくりに困難を感じていたことが３年余 の活動結果からわかる。見守り