幸福论-konan.docx

はじめに　普段、生活している中で「幸せだ」と感じることがある。あるとき私は、ふと「人々の幸せは何によってもたらされているのだろうか」と考えた。また、以前、大学の友人と会話している中で「あなたにとって幸せとは何か」と尋ねられたとき、私は明確な返答をすることが出来なかった。「幸福とは一体何か」という答えは、おそらく百人いたら百通りの答えがあると考える。そして、同じ人物であっても環境や精神的状況が異なると幸せの感じ方も異なってくるであろう。しかし、人間の幸福の感じ方にも共通点があるのではないかと私は考えた。もし、その共通する部分が見つかられたならば、今後生活していく上で幸せに生きるヒントが得られるであろう。また、自分以外の周りの人々を幸福にすることにも繋がるのではないかと私は考える。　この論文では、経済?社会指標や宗教?哲学?心理学的側面、そして国民の9割以上が幸福であると答えたブータンの事例、またデンマークの事例などあらゆる面から「幸福」について考察し、より良い幸福な生活を目指していきたい。　第1章では、なぜ現在、世界で幸福に注目が集まっているのかについて記述していく。　第2章『指標からみる「幸福」』では、あらゆる経済?社会指標と国民総幸福量（GNH）について詳しく説明していく。　第3章『宗教や哲学、心理学からみる「幸福」』では、世界三大宗教であるキリスト教、仏教、イスラム教に書かれる幸福について述べていくことにする。ここでは、最大宗派である、ローマカトリック教会、浄土真宗、スンナ派を取り上げることにした。哲学に関しては、アラン、ヒルティ、ラッセルが書いたとされる「三大幸福論」の考え方を説明する。そして心理学に関しては、幸福に関して書かれている「アドラー心理学」と「フロー心理学」について取り上げることにした。　第4章では、幸福度調査について述べたいと思う。実際に法政大学大学院政策創造研究科教授、坂本光司氏を中心に2011年4月から9月の間に行われた「47都道府県幸福度ランキング」の調査を基に、私が住んでいる神戸市と甲南大学マネジメント創造学部西宮キャンパスの所在地である西宮市の幸福度調査を実施、考察することにした。　第5章では、幸福の国「ブータン」について述べようと考える。ブータンが今日までどのような歴史を辿ってきたのか、なぜ国民の9割以上もの人が幸福を感じられたのか、またそのような国に残された課題、経済発展と幸福の追求はどちらも為すことが出来るのか、などを考えていこと思う。　第6章では、2006年に実施されたGNHランキングで首位となったデンマークの事例について考察する。歴史や現状、そして首位になれた理由について言及していくことにした。　第7章では、日本と上記の2カ国を比較する。経済的にも恵まれている日本がなぜ幸福度が低いのか、また、どうすれば将来的に日本全体の幸福度を上げることができるのかを考えていくことにする。なぜ今「幸福」に注目が集まるのか　現在、世界中では幸福に関するあらゆる取り組みが行われてきている。まず、注目すべきはブータンの事例である。ブータンは世界で唯一、国民総幸福量（GNH）を国の目標として掲げている国であり、GDP至上主義脱却を初めて謳った国である。その取り組みは、他の機関、他の国々に注目されるようになった。例えば、経済開発協力機構（OECD）は2004年以降、世界フォーラムを定期的に開催しており、幸福度指標についての議論が行われている。フランスでは、サルコジ前大統領がノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ米コロンビア大学教授などに依頼し、委員会を発足させて幸福度調査を行った。そして「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」による報告書（通称、サルコジ報告）を提出した。イギリスでは、持続可能な発展委員会による「成長なき繁栄」を提出している。カナダやオーストラリアでは幸福度指標の取り組みが行われている。また、日本では、2010年に民主党政権が2020年までに国民の幸福感を引き上げる目標を提示したり、東京都荒川区は「幸福実感都市」として荒川区民総幸福度（GAH）を掲げたりしているなど国内でも幸福への関心が高まりつつある。　では、なぜ世界各国、各機関でこのように「幸福」に注目が集まってきているのだろうか。日本における幸福への高まる注目の理由は、物質的な豊かに相反してストレスが増加してきていることが挙げられていた。これは、日本に限らず、他の国にもいえることなのではないかと考える。日本は、バブルが崩壊し失われた10年に突入し、人々が閉塞感を持つようになったことが幸福への追求へ拍車をかけているということがいわれていた。電通総研の袖川芳之氏は、「現代人が求めているのは、影響力を実感できる空間。それを取り戻した