化合物半导体混晶-J-Stage.PDF

114 日本結晶学会誌28,114(1986). 化合物半導体混晶 日本電気(株)・光エ レク トロニクス研究所 尾 鍋 研太郎 Kentaro ONASE: Compound Semiconductor Alloys. Compound semiconductor alloys have the flexibility to design energy band gap and/or lattice constant at desired value. This advantage has made these materials important for fabricating many advanced semiconductor devices, such as laser diodes and high-speed electronic devices. The growing importance in application has stimulated both theoretical and experimental studies on the fundamental properties of compound semiconductor alloys, such as bond, clustering, and immiscibi- lity. This article reviews recent progress in understanding these fundamental properties of III-V compound semiconductor alloys.•kJ. Cryst. Soc. Jpn. 28, 114 (1986)•l. 1.は じ め に 化合物半導体混晶は,組成を変化 させ ることにより禁制帯幅や格子定数 を所望の値に設計 できる特徴がある.このためAlxGa1-xASやIn1-xGaxASyP1-y鯉に代表 され るように,種 々 の波長域で動作す る半導体 レーザ の材料 として応用が拡大 しつつある1).またGa1-xInxAS では,二元化合物のGaAsに比べて高移動度を有 してい ることか ら,高速電子デバイスへの 期待がある2).このような応用上の進展 とともに,よ り高品質の結晶を得 る上でも,混 晶中 で異なる原子 どうしが どの ように配置 して結晶構造を保 っているのか,あ るいは原子が どの 程度不規則 に配列 してい るのか,と いった基本的な理解が改めて必要 となってきている.ま た混晶には,そ もそ もある特定の組成域では均一組成の結晶が得 られない といった非混和性 の問題があ り,実際に混晶を成長 し応用 しよ うとす る際に無視できない要因 となっている. これ らのことが らに関す る理解は,よ うや く最近になって,理論 と実験の双方か らの努力に より得 られ始 めて来た. 本稿では,化合物半導体混晶の中でも特に理解,応 用の進んでい るIII-V化合物半導体混 晶を例に とり,ボ ン ドの性質,原 子配列の不規則性 の程度(ク ラスタ リング),および非混 和性の問題に関す る最近の発展 を概観す る. 2.混 晶中 のボ ン ド III-V化 合物半導体は,混 晶に しても元の閃亜鉛鉱型結晶構造を保 ってい る.格子定数 を X線回折の方法で求めると,その値 は二元化合物の格子定数値を混晶比で平均化 した値に非 常に良 く一致す る(この性質はVegard則と呼ばれ る).このことか ら混晶の結晶構造のモ デル として,構成原子は格子定数か ら決まる平均的格子点上に存在す ると仮定す る,仮想結 晶近似(VCA,Virtual-CrystalApproximation)が従来用い られて来た.し か しX線回折 の方法は,原子間距離 より大 きいスケールの平均的構造 を与えるため,個 々の原子間距離の ような微視的構造に関す る情報は与えて くれない. 28.2-56 尾 鍋 研太郎 ところが最近 になってEXAFS(Extended X-rayAbsorptionFineSt