2019年予算编成に向けて-みずほ总合研究所.PDF

みずほインサイト 政 策 2018 年 9 月 21 日 2019 年度予算編成に向けて 政策調査部上席主任研究員 野田彰彦 歳出拡大は不可避も、一定の財政規律は保つ必要 03-3591-1309 akihiko.noda@mizuho-ri.co.jp ○ 2019年度予算の概算要求は過去最高の102.7兆円。要求額に含まれなかった「消費増税に備えた措 置」や「消費増税による増収分が充てられる施策」を考慮すると、予算規模は初の100兆円超えも ○ 今後の予算編成および税制改正においては、消費増税に伴う需要変動への対応策を具体的にどのよ うな組み立てにするかと、軽減税率の財源をいかに確保するかが大きな注目点 ○ 今年6月に策定された新しい財政健全化計画の信頼性を確保するうえでも、2019年度予算について は、規模が膨らむなかでも一定の財政規律を保つ必要がある １．過去最大規模となった概算要求 今年6月に安倍政権は、2025年度の基礎的財政収支（プライマリー・バランス、PB）の黒字化を目指 す新経済・財政再生計画（以下、新計画）を策定した1。この新計画の下で初めて編成される2019年度 予算に関する概算要求（および税制改正要望）が8月末に締め切られた。一般会計の要求総額は過去最 高の102兆7,658億円で、その内訳は、通常の概算要求分が98兆4,482億円、重点政策に配分する特別枠 「新しい日本のための優先課題推進枠」への要望分が4兆3,175億円となっている（図表1）。加えて 今回は、来年10月の消費税率引き上げに伴う需要変動（駆け込み需要・反動減）への対応策2や、 消費増税による増収分が充てられる施策（幼児教育無償化、子育て支援策等）に関し、概算要求基準 （2018年7月10日閣議了解）では「予算編成過程において検討する」とされ、要求段階での金額計上が 求められなかった。今後これらが上乗せされることもあり、年末に閣議決定される政府予算案（一般 会計）は初めて100兆円を突破する公算が大きい3。 今回の概算要求の特徴として、特別枠が拡充された点が挙げられる。2014年度予算から2018年度 予算にかけては、使い道の自由度が高い裁量的経費について前年度予算から1割削ることを求めた上で、 残る9割分の30％相当額（裁量的経費の27％相当額）までを特別枠に要望できた。これに対し、 2019年度予算の概算要求においては、裁量的経費の1割削減分の3倍まで（裁量的経費の30％相当額） を要望できることとなったほか、人件費などの義務的経費についても、削減した金額の3倍までを特別 枠に要望できる扱いが新たに取り入れられた。 安倍政権の重点政策分野に関する概算要求（特別枠も含む）の中身をみると、まず「人づくり革命」 では、厚生労働省がリカレント教育（社会人の学び直し）の拡充で1,191億円を計上し、キャリア アップ効果が高い講座に対する教育訓練給付の給付率引き上げを始めとする諸施策を盛り込んでいる。 文部科学省は、国立大学への運営交付金等（要求額1兆1,349億円）において若手研究者の活躍推進や 1 大学院生の授業料免除の拡大に力点を置いた要求を行ったほか、社会人向け教育プログラムの開発 などリカレント教育充実策に128億円を振り向けている。リカレント教育に関しては、総務省や経済 産業省も、不足するIT人材の育成に取り組むべく関連事業の予算を要求している。また、消費税率 引き上げと同じ2019年10月からの実施を目指すとされている幼児教育無償化について、所管する文部 科学省は金額を明示しない「事項要求」とした