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認知発達理論分科会第17回例会レジュメ 　　 2005.10.4 How to Make Cognitive Illusions Disappear どのようにして認知的錯誤をなくすのか？ Chapter12 Pp241-266 早稲田大学大学院教育学研究科　岡田いずみ 認知的錯誤とは、人が直観的に確率を判断すると、その値が規範的確率論に基づいた値とは食い違うことを指す。Kahneman Tverskyは人の判断は、認知的錯誤を生じていることが多いことを指摘し、これをヒューリスティックの観点から説明した。 　しかし、本当に人の誤りはヒューリスティックにより説明されうるのか。そもそもKahneman らの言う認知的錯誤は、本当に誤りなのだろうか。 P242　ヒューリスティックとバイアス Kahneman Tverskyの「ヒューリスティックとバイアス」の研究をもとにこの章で示すこと 人の判断を「誤り」として定義するための規範的基準の妥当性を論じる。Kahneman Tverskyらの研究は統計学の基本である概念的区別ができていないことを指摘する。 概念的区別に注意を払えば、強固な「認知的錯誤」を消したり、生じさせたりすることができることを明らかにする。 直観的確率判断が概念的区別に対して敏感であるという事実は、確率判断に対する新たな理解を導く。 P244　なぜバイアスはバイアスではないのか？ 確率推論のバイアス（誤り）とは……人の判断と規範的な基準の不一致 Kahneman Tverskyらの「ヒューリスティックとバイアスプログラム」の主要な2つの結果 いわゆる確率的推論の誤りとかバイアスと言われるもののリストを作った 　　（例「過剰信頼バイアス」「連言錯誤」「基準率の無視」） 代表性のような認知的ヒューリスティックの観点からこれらのバイアスを説明した Table12.1 抜粋 基準率の無視の頑健さ、普遍性は確立された事実である（Maya Bar-Hillel,1980）（Richard H.Thaler,1991）。P245　過剰信頼バイアス どちらの市の住民が多いでしょう？ （a）ハイデラバード （b）イスラマバード あなたの答えが正しいという自信度はどのくらいですか？ 50％　60％　70％　80％　90％　100％ たくさんの人に同様の質問に複数答えてもらい、同じ自信度を示した質問を1つのカテゴリーとしてまとめて、実際はいくつ正答しているのか調べる。 結果 「100％の自信がある」と答えた問題群　 →正答率はたった80％ 「90％の自信がある」と答えた問題群　　→正答率はたった75％ このように「自信度」が「相対的頻度」を上回っていることを過剰信頼という。 詳しい結果は　本文P247のTable12.2　をご参照ください P246　規範的問題 過剰信頼バイアスは確率論に背反するのか？　NO！ 頻度主義者によれば「確率」という用語は単一事象について言及するときには意味を持たない。つまり単一事象に対する自信と相対的頻度の間の不一致はバイアスでもなく、確率論に背反してもいない。 P247　どのようにして認知的錯誤をなくすのか？ 単一事象に対する自信と相対的頻度というものを区別し、頻度を問うフォーマットにする。 「これら50個の問題のうちで何問くらい正解だと思いますか？」 →　過剰信頼は消える。 つまり →?単一事象に対する確率と相対的頻度との不一致は「過剰信頼バイアス」とよばれるようなものではない ?人は直観的に（統計学者のような）区別をしている P248　連言錯誤 リンダは31歳、独身で率直かつ聡明な人です。彼女は哲学を専攻していました。学生のときは差別問題と社会的正義に強く関心をもち、核の反対運動にも参加していました。①、②のどちらの確率が高いですか？ リンダは銀行のテラーである（T） リンダは銀行のテラーであり、フェミニストの運動に熱心である（TF） Kahneman Tverskyによれば正しい答えは①。　しかし、85％が②を選んだ（Table12.3参照）。 　　　　　　　　　　　　　　 　Ｔ：テラーである確率 　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｆ：フェミニストである確率 　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｔ＆Ｆ：テラーかつフェミニストである確率 →　つまり、andで結ばれた2つの事象が同時に生起する確率は、それぞれが単独で生起する確率より高くなることはない。 詳しい結果は　本文P249　Table12.3をご参照ください P249　規範的問題 ②を選んだ人は確率論に背反しているのか？　NO