社会心理学の観点から見た内部告発介绍.pdfVIP

社会技術研究論文集 Vol.1, 268-277, Oct. 2003 社会心理学の観点から見た内部告発 WHISTLE-BLOWING AS A DETERRENT TO ORGANIZATIONAL WRONG-DOINGS: FROM THE SOCIAL PSYCHOLOGICAL POINT OF VIEW 1 2 3 4 王 晋民 ・宮本聡介 ・今野裕之 ・岡本浩一 1 学術博士 社会技術研究システム 社会心理学研究グループ(E-mail: wang@ristex.jst.go.jp) 2 博士（心理学）常磐大学人間科学部助教授・社会技術研究システム 社会心理学研究グループ サブリーダー(E-mail: smiya@tokiwa.ac.jp) 3 修士（心理学）目白大学人間社会学部講師・社会技術研究システム 社会心理学研究グループ サブリーダー(E-mail: konno@mejiro.ac.jp) 4 社会学博士 東洋英和女学院大学人間科学部教授・社会技術研究システム 社会心理学研究グループ リーダー (E-mail: okamotok@ristex.jst.go.jp) 内部告発は組織における不正行為を暴露して制止させるだけではなく，新たな不正行為を抑止する効果が ある．内部告発は内部告発者本人の動機付けと第3 者の内部告発に対する許容度の２つ側面がある．前者 は潜在的な告発者の告発行動を起こす意向で，後者は，社会や組織構成員の内部告発・内部告発者に対す る態度からの影響である．適切な内部告発を推進する環境や内部告発に関する効果的な教育プログラムを 作るために，本研究は内部告発行動や内部告発及び告発者に対する態度に対する個人特性・組織特性の影 響について社会調査で調べ，その結果に基づいて社会心理学の視点から内部告発に関する制度や教育プロ グラムに対する提案を試み，内部告発に関する社会心理学研究の役割と方向について検討した． キーワード：内部告発，態度，組織，不正行為，社会心理学，社会技術 1. はじめに 数を占めている．組織内で不正などが行われていると知 ったとき，通報するかどうかの問いに対して「通報する」 内部告発(Whistle-blowing)によって明らかになった組 と「重大な場合通報する」が 56.5％で，「通報しない」 織における不正行為という不祥事が数多く報道されてい が7％，「その場になってみないと分からない」が36.5％ る．例えば，2000年6月に三菱自動車工業(株）におけ であると報告しており，一般消費者（一般市民）は内部 るリコール隠し問題，2002年1月に雪印食品 （株）にお 告発を肯定する傾向を示している． けるBSE（狂牛病）対策補助金の不正請求問題，そして 内部告発の社会的効果が認識されつつある一方，内部 2002年9月に東京電力(株）による原子炉自主点検にお 告発に対して「内部告発は密告行為だ」，「内部告発は日 ける点検記録不正記載問題がまだ記憶に新しい．いずれ 本の風土になじまない」などの否定的な考え方や組織に の事例も，一般消費者や社会全体の健康，財産，あるい よる内部告発者への報復行動も依然として様々な形で存 は生命に対する侵害，またはその可能性の高いものであ 在している． った．これらの内部告発がなければ，より甚大な被害が 社会の公益のための内部告発を保障するには，まず法 出たか，闇の中に永遠に埋もれてしまったかもしれない． 律による告発者の保護が重要である． 実際には，内部告発によって，それぞれの不正行為の摘 諸外国においては，内容は異なるが，内部告発者保護 発，関係者の処罰，そして類似問題の再発防止など，様々 法が制定されている2～4）． な側面での対応が取られ，結果的は消費者や社会全体の 例えば，アメリカで