意思决定支援STEP1～STEP4.PDFVIP

意思決定支援 STEP１～STEP４ −　103　− −　105　− 2015年厚生労働省から発表された「人生の最終段階における医療の決定プロセ スに関するガイドライン」につきましては、その詳細を述べるのは省略いたします が、概念図を描くと、スライドのとおりです。 この項では、患者の意思決定能力についての説明となりますが、これは図の中で 「患者の意思が確認できる場合」に相当します。 −　106　− 私たちは、日常において、全ての事柄に、意思決定しながら生活をしています。日 常生活における意思決定は、多くの場合、自分の判断で決定しています。しかし、 医療行為について、特に人生の最終段階における医療行為についての意思決定 を行うとなると、経験のしたことのない、非常に難しい決定を迫られることになりま す。 したがって、十分に情報を理解し、自分の置かれた状況を認識し、それを解釈して、 自らの決定を表明しなくてはなりません。 そこで、これら、意思決定のプロセスについて概説します。 −　107　− 意思決定を進める際には、先ず、患者が自己決定ができる状況なのか、それとも 代行判断を行わなければならない状況なのかについて判別する必要があります。 その際には、患者の意思決定能力の評価が不可欠となります。 しかし、「実際の意思決定能力」と「評価された意思決定能力」に乖離が生じた場 合には、患者の自律性が侵害されたり、患者自身に危害が及ぶ可能性が高まり、 道徳的に好ましくはありません。 こういったことから、医療者は、意思決定能力の評価に関する知識と技術を備えて おくべきでしょう。 −　108　− 我々医療従事者は、患者との会話から経験的・直観的に、患者に自己決定能力 があるかを推定しています。 しかし、スライドに示すような状況では、意思決定能力を慎重に評価する必要があ ります。 特に人生の最終段階に当たっては、患者の自己決定が、患者の死に関わる決定 となるため、慎重を要します。 −　109　− 患者のすべてが、医療者側からの説明を最初から理解できるわけではありません。 患者の意思決定能力を最大限に発揮できるよう、医療者は可能な限り患者の自 己決定能力を促進（エンパワーメント）しなければなりません。 そのためには、 ・情報開示の質を高める、例えば、患者にとって、わかりやすい言葉を用いる、複 数回の説明、文章、図、通訳等の活用 ・家族や友人に同席してもらう ・心理的サポートにより不安や恐怖を緩和する ・熟考を促し、決定を急かさない などを心掛けたいと思います。 −　110　− では、意思決定能力の実際の評価に入りたいと思います。 まず、意思決定能力を構成する要素を考えてみましょう。 意思決定に関連する情報の理解、意思決定の必要性や選択した内容がもたらす 結果などに関する認識、決定は論理的思考に基づいてなされていること、そして 決定内容を相手に表明できる、という4点になります。 −　111　− では、次に、評価のスキルを簡単に紹介します。 1つ目のプロセスとしての情報の理解ですが、理解してもらうためには、私たち医 療者は患者さんに情報を開示しなくてはなりません。 情報開示においては、 病名、病因、機序、兆候、症状、経過 治療しない場合に予想される経過 推奨される治療：医学的に見て最善と思われるもの その治療に伴う利益と負担 代替となる治療 理解しておくべきその他の重要事項 について、患者の理解レベルに合わせて、説明するプロセスが求められます。 −　112　− 与えられた情報の理解の評価については、例えば、 「どのような説明を受けましたか？教えてください。」「病名は何ですか？」 といった質問をし、患者が ・病気の内容（病名、病状、病期など） ・提案された治療と代替案の内容 ・それらの利益と負担 などを正確に回答できるかどうかをチェックしま