『山水並野形図』現代訳データ.docVIP

山水並野形図 一、　東方朔（中国の著名な方士）の居所を記した図を指して、少し書き出すところがある。まづ、庭に原、山、峰、滝、河を構えるには、石木を躰とするべきだ。故にまづ能々石の五色に相克、相生を思ひ合わすべき。山水、野筋はほとんど山である。左右に二つの山を築くべきである。陽の山は大いに高くして、陰の山は少し低くするべきである。その場所で良いと思われる方に陽の山を築くべきである。　しかし、水を落とさないことを考えれば、これは野筋の手法であっても、　所によって地形に随って滝を落とすことがあってもよいだろう。山、水、石は例えて言うならば三足の如く、一つが欠けては、存在することは出来ないと言える。　　　　　　　 一、　石の五色を心得て能々相克相生を思い合わして立てるべきである。相克というのは、木克土、土克水、水克火、火克金、金克木であり、これらをもって考えるべきである。木姓の人は青く、黄石を向かう方向に立ててはいけない。木克土の故である。土姓の人の色は黄色である。黒石を常に見るほうに立ててはいけない。土克水の故である。このようにあっても、青石をさして嫌ってはいけない。水姓の人の色は黒色である。赤石を常に見える方向に立ててはいけない。水克火の故である。火姓の人の色は赤色である。常に見える方向に白石を立ててはいけえない。火克金の故である。金姓の人の色は白色である。常に向かう方向に青石を立ててはいけない。金克木の故である青石を立てれば合姓石をよせない。 相生というのは、木生火、火生土、土生金、金生水、水生木、木姓の人は赤石を立てるべきである。これは相生であるけれども、五色の中に赤石は禁忌とされている。火姓の人は黄石を常に見える方に立てるべきである。土姓の人は白石を立てるべきである。金姓の人は黒石を立ててみれば吉となり。水姓の人は常に見える方に青石を立てるべきである。相生とはこのようなことである。 また、相加というものもある。赤石を南に立て、これに向かって南に天竺を植えて見ることは、火姓の人くり返すと良くないだろう火が四つ寄り添うと火難があると言われている。 　青石を東に立てて、木姓の人が見ることは相加である。黄石を庭中央に立てて、土姓が見ることはやってはいけないことだ。また白石を西の方に立て、金姓の人が見ることもやってはいけないことだ。黒石を北に立てて火姓の人が見ることもやってはいけない。 　大方これを心得て、山水、野筋を作るべきである。 　又、野筋はまづ陰陽の二つを作るべきである。陽山は大きく高くして、陰山は少し低くするべきだ。 　又、滝河の事　左は西竜を置き、右は白虎を置くために、家は南に向かって立てて、丑寅より滝を落とすべきである。このようにして丑寅の方より水を流せば、水によって災難が起きることはないと言われている。 又、未申へ水を落とすと神王水となるので戌亥からも落とす。又神王とは諸々の宇賀神、ことさら弁才天の智水となると言われている。又戌亥に神王石として切目の石を立てる。（神王石は高貴な石であるため）足下（に布石すること）を戒める為に、家の縁よりも地形が下ならば立ててはいけない。 　辰巳の方より滝、川を流してはいけない。逆水といって逆に流れる水を、俗にさかさまに流れる水という時はこの方の水である。場所によって大河の中を逆さに流すことが過去にもなかったから、これを逆水と名づけていう。 　この外に又第一に取るべき石は不老石というものがある。たとえば上も切らず、四方これは大きな石である。小さくては見所がない。この石は蓬莱である。この蓬莱を負っている亀を万却といって、不老に添って立っている。これが亀であったなら、斯様な石をこれに覚えるべきである。先ず不老万却を立ててからその他の石を立てるべきである。 　まず庭には宗とするべき石がある。一、不老　二、君石　三、敬愛石。不老の姿が一番上にある。君石は只不老よりも小さく、臣石、敬愛石の二つは例えばこの姿である。君石は臣を哀れみて、臣石は君を仰ぐべきであるといわれている。 一、敬愛石は少し覗きたくなるような石を二つ（二つの石をの感覚を覗き見する程接近させて）額と一位を合わせて立てるべきである。 別石（ちぐはぐな石）に立ててはいけない。すべての調和のとれた石を立てる。 蝦蟆石といって蛙に似ている石がある。目立つように立てず、神王意思は戌亥より辰巳の方へ向かって立てる。この蝦蟆石は荒神の障碍神である。 　例えば、蛙に似た石を戌亥に向けて（戌亥から見えぬよう）隠して立てよということである。陰（蝦蟆）陽（神王）二つの仲が目だって見えないように立てるべきである。蝦蟆は荒神といって祝う場所である。又いつも禍をもってくる神である。だから弁才天を地神にしているのである。 石はあるときには出棚（落縁）の前に置いて