加工食品の原料原産地表示について.pdfVIP

話　題 加工食品の原料原産地表示について 宮城大学　名誉教授　 池戸　重信 かし、結果的には、合意には至らず、宿題とし １　これまでの経緯 て残った。 消費者ニーズの高まりなどを背景に、現在、 ２　原料原産地制度に関する検討会 全ての生鮮食品を対象に「原産地」が、さらに における検討と背景 加工食品のうち22食品群・個別４品目を対象 前記の経緯を踏まえて、平成28年１月に消 に「原料原産地」の表示が義務付けされている。 費者庁と農林水産省との共催により「加工食品 これらは、いずれも「農林物資の規格化及び品 の原料原産地表示制度に関する検討会」が設置 質表示の適正化に関する法律（以下「旧JAS法」 され、全10回の検討がなされた結果、同年11 という）」に基づいたもので、「品質の差異」を 月に以下の内容の中間取りまとめが公表され 指標としたものである。このうち、加工食品に た。 ついては、義務対象となる要件として、原則と ３　表示義務化の骨子 して以下の条件を満たすものとなっていた。 ①原産地に由来する原料の品質の差異が、加工 検討会の中間取りまとめにおいて、新たな制 食品としての品質に大きく反映されると一般 度の基本的なルールは、「全ての加工食品につ に認識されている品目 いて、重量割合上位１位の原料の原産地を義務 ②製品の原材料に占める主原料である農畜水産 表示の対象とする」とされている。 物の重量の割合が50％以上である商品 すなわち、これまでは前記のように「品質の その後、平成21年に消費者庁が設置され、 差異」が指標とされ、原料についていわゆる 食品の表示に関する所管が同庁に一元化された 50％ルール該当品目のみが対象となっていた ことを契機に、「食品表示一元化検討会」が設 が、今回は「品質」にはこだわらず、全ての加 置され、その中の論点の一つとして、加工食品 工食品について重量割合上位１位の原料を義務 の原料原産地表示制度についても議論がなされ 対象としている。 た。 また、義務表示の方法については、「国別重 ここでは、食品表示法の制定を前提に、旧 量順表示を原則とする。ただし、国別重量順表 JAS法に基づく「品質の差異」の観点にとど 示が難しい場合には、消費者の誤認を防止する まらず、新たな観点（品質以外の指標も含めた ための方法を明確にした上で、例外の表示を認 観点）から原料原産地表示の義務付けの根拠と める」とされた。具体的には、対象原材料の産 することについて議論を進めたものである。し 地について、国別に重量の割合の高いものから 2 畜 産 の 情 報 　 2017. 4 順に「、」でつないで国名を表示することを原 できる限り充実した産地情報を提供する制度と 則とするが、原産国が３カ国以上ある場合は、 すべきであるとしている。すなわち、表示を全 現行ル