感染症の白血球増多及び減少症の成因に関する研究.PDFVIP

昭和33年10月20日 431 特別講演 感染症の白血球増多及び減少症の成因に関する研究 東北大学医学部黒川内科 斎 藤 章 1.緒 言 増多症を示して死亡した数例における観察か ら 感染症において病原体が生体に作用する場合, Naegeli説 に疑をもち,各 種感染症の白血球増多 生体防衛機構において最も迅速且つ敏感に反応す 及び減少症の成因について追及し2)3),鼓 に其結 るものは生体内自由細胞である白血球である.感 論に到達したので報告する. 染症において白血球の数及び其種類の変化は夫々 II.実 験方法 の疾患に特異的であるから,末 梢血液の白血球の 本実験における骨髄機能検査には各例4～7日 変化によつて個々の疾患の概診を下し得る許りで 毎に系統的連続的骨髄造血機能検査を試み,胸 骨 なく,確 診を下し得る場合も決して少くない. 髄穿刺は第豆,III肋間腔の高さで正中線より梢々 感染症を白血球の量的変化から分けると白血球 側方(3～5m皿)を 穿刺し,骨髄0.1ccを 採取し, 増多症と減少症とになる.白 血球増多症を示す疾 骨髄有核細胞数を数え,骨 髄塗抹標本はMay-Gi 患には内科,小 児科領域のみでなく,外 科,産 婦 emsa二 重染色を試み,末 梢血と比較した. 人科,耳 鼻科,眼 科,皮 膚科等の各科領域の感染 骨髄造血機能の本態を究明するためには骨髄有 症又は化膿性疾患がある.即 ち白血球増多症を示 核細胞の質的変化と同様に量的変化をも重要視し す疾患:各 種肺炎及び気管枝肺炎,日 本脳炎及び なければならない.従 つて骨髄有核細胞の絶対数 其他の脳炎,コ レラ,狂 犬病,痘 瘡,百 日咳,丹 を出来るだけ正確に計測する必要があるので,こ 毒,ジ フテリヤ,発 疹チフス及び発疹熱,猩 紅 のため本学解剖,病 理,法 医各教室の解屍700例 熱,敗 血症,梅 毒,淋 疾,扁 桃炎二,顎下腺炎,回 につき全身骨髄の解剖学的構造及び病理学的変化 を検し,胸 骨髄穿刺において骨髄採取不能の場 帰熱,Weil病,中 耳炎,虫 垂炎,肝 膿瘍,産 褥 熱其他の感染症又は化瘍性疾患があり,又 白血球 合,又 は良質の骨髄が採取されないのは次のよう 減少症を示す疾患:腸 チフス,パ ラチフスA,K な場合であることを知った.す なわち, 及びB,麻 疹,風 疹,小 児麻痺,イ ンフルエンザ, 1)関 節間板,2)軟 骨連合,3)脂 肪転化, 恙虫病,エ ゾ熱,七 島熱,突 発性紅斑,Bang病, 4)腫 瘍転移,5)広 い骨髄洞,6)空 隙形成, malta熱,カ ラアザール,流 行性肝炎,デ ング7)骨 硬化症,8)骨 髄線維症 熱,パ パタチ熱等がある. 等が主である. なぜこのように感染症では白血球増多症や減少 次に骨髄有核細胞の算定法は最も合理的なRo- 症を示すかという理由については諸説行われてい hr4)法によつた.其 理由とする処は,1)骨 髄内 るが,よ くわかつていない.今 日最も広く行われ 赤血球系細胞即ち赤芽球の分布は不平等で集積性 高く,且 つ骨髄内では白血球系有核細胞100に 対 ている説はNaegeli説 で,Naegeli1)は 白血球増