偐圣」纹福、佑」茅宝」梯钱」.PDFVIP

西夏文字銭五種 吉池孝一 古代文字資料館では西夏文字が鋳込まれた西夏国の貨幣を幾つか管理 して いる。2004 年 ７月時点で 「福聖宝銭」「大安宝銭」「貞観元宝」「貞観元宝 (行 書風)」「乾祐宝銭」「乾祐宝銭 (贋作)」「天慶宝銭」の五種七点。本稿ではこ の五種七点を紹介する。 以下西夏文字の説明において、李範文編著 『夏漢字典』(中国社会科学出版 社，1997 年)の文字番号 と漢語訳および 『今昔文字鏡』の西夏文字フォント を利用する。 １．「＊福聖宝銭」福聖承道年間(1053年～ 1056年) 径 ：24.31mm 厚 ：1.56mm 重量 ：4.5g 材質 ：銅 上 ：2544 偐 「聖」 右 ：2342 紋 「福、佑」 下 ：5655茅 「寶」 左 ：1604梯 「錢」 羅福萇 『西夏国書略説』(1914 年)は、当該銭の上を聖、右を福 とし、この 二字を福聖 という漢語にあて、全体を福聖宝銭 と読んだ。 これは西夏国年号 の福聖承道の福聖にあたる。この解読案は聖 と福は倒置 されているとみる。 下と左は、西夏文字 5655 「宝」、1604 「銭」を崩 した字形であろう。ところで、 拓影の上 と右は、2544「聖」、2342 「福」 とは字形が異なる。 この状況は他の 資料でも同様であり、「福聖」以外の解読案が出されることになる。陳炳應 「関與西夏銭幣的幾個問題」 ( 『中国銭幣』1989-3,pp.18-23)は、上 と右の文字 は福聖には見えないとし、漢語 としては＊稟徳宝銭 とすべきであるとする。 この稟徳(徳を受け継 ぐ)にあたる西夏語は 『番漢合時掌中珠』 (乙種本二十七 丁裏)にも出てくるもので、第一字目が 2748哘 「徳」、第二字目が 2135 篇 「稟 」 (動詞)。確かにこちらのほ うが当該の西夏文字銭の字形に近い印象を与える。 しかしながら、拓影上字の右側部分 と2748 哘の右側部分は明らかに異なる。 このような相違を崩 し字形に起因するものとすることも不可能ではないけれ ども、他の西夏文字資料によって実証する必要がある。 - 1- ２．「大安宝銭」 大安年間 (1075年～ 1085年) 径 ：28.37mm 厚 ：2.00mm 重量 ：8.8g 材質 ：銅 上 ：4456 絛 「大」 右 ：0139 欺 「安、泰、利、善、易」 下 ：5655茅 「寶」 左 ：1604梯 「錢」 縁が広い大ぶ りの貨幣 (濶縁大様)。文字部分の摩滅が進んでいるけれども 「大安宝銭」として問題はない。 ３．「貞観元宝」貞観年間(1101年～ 1113年) 径 ：26.87mm 厚 ：1.55mm 重量 ：4.3g 材質 ：銅 上 ：2748 哘 「徳、正、貞、平、靜」 右 ：5593蛙 「観、瞻、看」 (動詞) 下 ：5655茅 「寶」 左 ：0856 授 「根本、根源」 この種 の西夏文字銭 は趙権之 「介紹新発現一種西夏文銭」 ( 『泉幣』 3,pp.22-23.1940 年)において初めて公にされ、＊貞観宝銭 と読まれた。貞観にあ たる上 と右、および宝にあたる下に問題はない。問題となるのは左である。 この文字につき趙権之 (1940;p.23)は、左は通常の 「銭」を表わす文字 とは全 く異なっていると述べ、断定を控えながらも、それを 「銭」の異体字とする。 その後、この文字は彭信