小売店舗における来店促進の取り組みの 課題と展望.PDFVIP

特集　小売店舗の集客施策と消費者の店舗選択 小売店舗における来店促進の取り組みの 課題と展望 鈴　木　雄　高 （財）流通経済研究所研究員 た小売業は少なくないが、市場が縮小過程に １．はじめに 入る中で成長を続けるには、既存店の集客力 わが国の小売業を取り巻く環境は、総人口 を高め、売上を維持ないし向上させることが の減少や近い将来に世帯数が減少過程に入る 不可欠である。しかし、小売業の中でも比較 ことによる市場全体の縮小1)、高齢化の進展 的好調とされるコンビニエンスストア業界で に伴う食料品需要の減少など、人口構造の変 さえ、2005年から2010年までの既存店来店 化に伴って大きく変わろうとしている。また、 客数の対前年比は、taspo効果の追い風を受 情報通信技術の発展が人々のライフスタイル けて客数増加が目立った2008年、2009年以 に変化を及ぼすなど、市場には質的な変化も 外は、横ばいかマイナスとなっており2)、既 生じている。 存店の来店客数を増加させることはもとより、 小売業各社は、このような変化に対応し、 客数を維持することも容易ではないことがう 消費者の支持を得るために、様々な取り組み かがえる。 を推進している。例えば、食品スーパー各社 また、新聞の定期購読世帯数が減少する中、 は単身世帯の消費者のニーズに対応すべく 食品スーパーを始めとして多くの小売業が費 カット野菜や惣菜の小分けパックなどの品揃 用対効果の観点から新聞折込チラシによる来 えを強化しており、一方でコンビニエンスス 店促進を見直し、チラシを削減する企業もあ トアは主婦や高齢者の来店を促すようなテレ る3)。図表１は首都圏における総合スーパー、 ビ・コマーシャルを放送している。これらは、 食品スーパーの１世帯あたり新聞折込チラシ 従来の主要顧客層とは異なる新しい顧客層に 枚数の前年同月比の推移であるが、近年は１ 対するマーチャンダイジングやコミュニケー 世帯当たりのチラシ到達枚数が減っているこ ションの取り組みの例であり、他業態におけ とが確認できる。一方、twitterやfacebook る主要顧客層を奪取しようという試みでもあ などのソーシャルメディアを活用して消費者 る。このことからもわかるように、小売業に とコミュニケーションを図りながら、店舗へ おける競争は業態内のみならず、業態間でも の来店を促そうとする小売業も登場している。 激化してきている。更には外食を始めとする 本稿では、激化する競争環境において、い 小売業以外の業種との間でも、限られたパイ かに店舗への来店を促すかといった観点が重 の奪い合いが生じている。 視されることが想定されることを踏まえ、小 これまで新規出店により売上を伸ばしてき 売店舗における来店促進の取り組みについて 小売店舗における来店促進の取り組みの課題と展望 23 図表１　首都圏における１世帯あたり新聞折込チラシ枚数前年同月比の推移4) （総合スーパー、食品スーパーの折込チラシ） 140.0  ） % （ 比 120.0  月 同 年 100.0  前 数 枚 80.0  シ ラ